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2巻に続き、3巻も読み返したので感想とネタバレを書いていきます。
2巻のあらすじと感想はこちら↓
1巻はこちら↓
落ち込んでいる人を元気づけたい
美津未は念願叶って生徒会の書記に任命されます。
しかし、美津未の尊敬する高嶺先輩(ずっと生徒会長を志望しており、最有力候補だった先輩)はなんとなくで立候補してきた2年生の人気者風上先輩に生徒会長の座を取られてしまいました。
落ち込む高嶺先輩になにも声をかけることができなかったという美津未に、演劇部の兼近先輩が立ち上がります。
兼近先輩は、美津未と高嶺先輩、そしてたまたま居合わせた志摩のいる生徒会室に突撃し、自分が子どもの頃に撮った処女作、『コムラ』の上映会をします。小学5年生が脚本から演出まですべて1人で行った映画は拙く、みんな「なんでこんなものを観せるんだろう…」ときょとんとしています。
そんな3人に兼近先輩は頬を赤くしながら、
そりゃ僕だって いつか最高のものを作って みんなに認められたいけど……
これだって誰にも観せないよりは 君らが笑ってくれるならいいと思ったんだ
高松美咲『スキップとローファー』3巻 p25
と言うのです。
自分の拙い作品を観せ、恥ずかしがりながら言ったこの台詞は、高嶺先輩の心を動かし、3人を笑顔にさせました。
人を、しかもすごく仲の良いわけではない高嶺先輩や美津未のために動き、自分をよく見せたいという多くの人が持つ心を、まるで存在しないかのように捨て身で元気づけようとする兼近先輩、あまりにかっこいいです。
あなたからもらうからうれしいんだよ
続いて動物園デートの回です。
美津未は電車のホームで知らない他校の女子に連絡先を訊かれ、断っている志摩を目撃します。志摩は、
なにも友達になりたくてきいてくれてるんじゃないと思うから 中途半端も悪いしね
高松美咲『スキップとローファー』3巻 p35
と、言います。外見が良くて勉強もできて友人も多い志摩ですが、調子に乗ったところを見せず、達観した様子です。
その後も「夏休み直前モテラッシュ(夏休みに入ってしまうと会えないのでその前に気になる人に告白したり連絡先を交換したりすること)」によって知らない女子から挨拶されたり、告白されたりする志摩。
関わりないのに連絡先きくってさーー
100%気軽な友達からは始められないじゃん
ハードル高いし勇気いるよなー
高松美咲『スキップとローファー』3巻 p39
という山田(美津未らのグループの1人で、明るい男の子)の話を聞いて、美津未は「今朝の他校の子もそういえば髪の毛とかかわいくしてたよな、すごく勇気だして話しかけたのかも」と考えます。
こうやってモテる志摩にひやひやしながらも、他人の心に寄り添う美津未が素敵ですね。
そんなことがあった直後、美津未が志摩に「みんなで動物園行かない?」と言おうとして、「2人で行かない?」と口を滑らせます。志摩があらゆる女子からのアプローチを断っているのを見て、偶然でも友だちになれてよかった、と考えているところだったので、焦る美津未でしたが、予想に反して志摩は普段通りの口調で「いいよー」と答えます。
人畜無害な自分に安心しているだけなのだろうと思いつつ、「2人で出かけるの嫌じゃないんだ…!」とよろこぶ美津未。
ミカはその場面を偶然見かけてなにか思うようなところのある表情ですが、特に声をかけたりすることなく、校門に向かいます。そんなミカに近づくセーラー服の女の子。ミカの目が見開かれます。目の前にいたのは人気モデルの梨々華でした。梨々華は友人の志摩に会いにきた様子でした。
仲良さげ(自由奔放で気の強い梨々華に志摩が手を焼いている感じ)な2人にミカは「だれもが羨ましがる綺麗な女の子連れて、志摩くんも普通にミーハー男なんだ。なんかがっかり」と不快感をあらわにします。
そして動物園デート当日。2人を物陰から覗くミカに、美津未が悪い男に引っかかっているのではと心配してこっそりついてきたナオちゃんが声をかけます。目的が一致している2人は初対面ながら共に2人をつけます。
ナオちゃんが「美津未がもてあそばれてるなんてことは…?」と口にすると、ミカは2人を見つめながら「それはない、絶対」と強く否定します。そんなミカに「…好きなんだ? 志摩くんのこと」とにやにやするナオちゃん。ミカは「高校生のうちにハイスペックな彼氏つかまえるのが目標ってだけです!」と赤面します。
動物園デートを続ける美津未と志摩ですが、美津未は緊張と夏の暑さからか若干ぼーっとしています。美津未はせっかくのデートだと思い、いつも通り振る舞おうとしますが、志摩はそれを見抜き、「今日は帰ろうか」「また来ればいいじゃん」と微笑みます。
ミカはそれを見て、(「志摩くんも普通にミーハー男なんだ」と言ったことについて)こう思います。
そうじゃないことくらい知ってる
誰でもうらやましがる男の子連れたら 自分も何かになれると思ってるのは私
高松美咲『スキップとローファー』3巻 p76
ちなみに、「なんかがっかり」は自室で1人でした発言なので、ミカのかなりの拗らせっぷりが伝わります。
その後美津未と志摩はお土産コーナーに行きます。美津未は妹と弟にお土産を選び、志摩に3歳の弟がいると知ってお土産を買って帰ることを勧めます。
会計を済ませた美津未は志摩にパンダのキーホルダーをあげます。「2個入りのお得なやつだったから気にしないで!」という美津未に(それはカップル向けでは…)と思いつつ鍵につける志摩。
出口に向かう際、志摩はフェネックのぬいぐるみを視界に捉え、弟はこの動物園に来たことがあることに気がつきます。それを理由に弟へのお土産を美津未にあげようとしますが、美津未は怪訝そうな顔で「関係なくない? 志摩くんからもらうからうれしいんだよ」と力説します。納得いっていないような志摩でしたが、ふと美津未からもらったパンダのキーホルダーに目を落とし、「そうだね」と微笑みました。
誰かと本当の友達になれるチャンスなんて
続いて、美津未、ミカ、結月、誠の女子4人が美津未の家(ナオちゃんの家)でお泊まり勉強会をする回です。
ちなみに美津未は志摩と動物園に行ったことはだれにも話していないようです。素朴で感情が表情に出がちな美津未ですが、こういうことは内に留めておくような女の子のようです。
タイプが違う女子4人のわちゃわちゃがかわいいですが、そこにミカの闇が挟まれます。外見や性格が良く実家が太そうな結月の、今まであまりいい人間関係を築いてこられなかったという話を聞いて、
ちょっといじわるするくらいいいじゃんって気持ちになる子がいるのもわかる……
と 思ってしまうのは 私がそっち側の人間だからでしょーか
高松美咲『スキップとローファー』3巻 p97
と考えます。ミカはこの勉強会に自分も誘われたことに疑問に思ったりもしていることから、みんなとあまり馴染めていないようです。
ミカは「家族で外食するから」と帰る準備をしますが、ちょうど家を出るところだったナオちゃんとエレベーターに乗り合わせます。そこでナオちゃんが「もしかして外食ってウソじゃない?」とちょっといじわるそうな顔で言います。ミカはギクっとして「どーせ夜は恋バナとかになるじゃん 気まずいし」と告白します。そんなミカを見るナオちゃんの目が優しい。
今年のブラウス
おしゃれの勉強してるんだろうなっていうコーディネート
つばめ西入るくらいだから根がマジメなのね
それでも自信が持てなくて傷つきたくない
高松美咲『スキップとローファー』3巻 p101
まだ学生だった頃の、学ランを着た自分の姿とミカが重なります。
そして、「ちょっとでも泊まってもよかったなって思うなら、外食は勘違いだったったって今すぐ連絡しなさい」と言います。「今さら恥ずかしい」というミカに、「恥ずかしいとこあるくらいがかわいいわよ」と言い、
誰かと本当の友達になれるチャンスなんてそうそうないのよ
高松美咲『スキップとローファー』3巻 p103
と背中を押します。
その後、4人でカレーを作ったりスキンケアをしたりホラー映画を観たりして盛り上がるセリフのないコマが続き、4人の仲が深くなったような描写でこの回は終わります。
※スキローは毎話かなり濃厚なので、かなり端折っています。未読の方はぜひ手に取ってみてください。